中小企業経営のK社長:男性、50代。建築関係の仕事を行っており雇用関係の従業員だけでは人手不足のため、臨時で人を雇うこともある。

  • 藤井
  • はじめまして、人材雇用についての税金の取り扱いでご相談があるということで内容をお聞かせください。
  • K社長
  • 現在、10人ほど雇用関係がある従業員と、その他に副業として臨時で働いてくれているスタッフ(以下、副業スタッフという。)から給与(副業スタッフ側では給与所得。以下省略)ではなく、外注費(副業スタッフ側で事業所得。以下省略)として報酬を支払ってほしいと相談がありました。今まで給与としてしか支払ったことがないので、外注費として支払うことに対して注意が必要なことがありましたら教えていただけますでしょうか。
  • 藤井
  • まずポイントとなるのが、会社が副業スタッフに支払う経費が給与なのか外注費になるのかというのは、会社側で勝手に決めるものでないという点です。副業スタッフ側からの立場で税法上はそれぞれの所得について以下のように定義しています。


    給与所得とは、雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお、給与所得については、とりわけ、給与所得者との関係において何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない。

    所得税法第28条



    事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう

    所得税法第27条
  • K社長
  • 副業スタッフ側からの視点で考えるということですね。
    支払った会社側の会計処理も、受け取った副業スタッフ側の会計処理は支払った側と受け取った側で統一されていないとダメですよね?
  • 藤井
  • その通りです。会社側の会計処理と副業スタッフ側の会計処理については、裏表の
    関係がありますので、会社側が給与として支払うものを副業スタッフ側が事業所得として処理することはできませんし、会社側が外注費として支払うものを、副業スタッフ側が給与所得として処理することはできません。
  • K社長
  • ちなみに、通常の従業員については給与を支払っていたので毎月給与明細を渡して、うちの会社で年末調整していますが、副業スタッフの場合、給与で支払う場合と外注費で支払う場合の相違点を教えてください。
  • 藤井
  • まず、副業スタッフに給与を支払っている場合、給与明細を毎月発行(副業スタッフが本業の会社給与の所得があるため乙欄源泉を前提)するのは同じですが、その年の給与が確定したら年末調整未済の源泉徴収票を発行します(一定の場合の除く)


    次に、副業スタッフに外注費を支払う場合、副業スタッフから請求書を発行してもらい、振込でなく会社が現金で支払う場合には領収書も副業スタッフに発行してもらいます。注意すべき点はその外注費が「報酬・料金の源泉徴収事務」に該当する者の場合には、その外注費から10.21%(最大20.42%)の源泉徴収をしなければならないため注意が必要です。


    また、源泉徴収した外注費が一定の場合を除き年間5万円を超える場合、支払調書は必ず税務署に提出するという点が違います。
  • K社長
  • なるほど。外注費だと本当に一般の取引先を相手にしている処理ですね。
    あと、先ほどの定義だけだと、不明瞭で私も副業スタッフも自分で判別できないのですが、給与と外注費の具体的な判定基準はあったりしますか?
  • 藤井
  • これについては、税務調査でも度々納税者側と税務署側で揉める点です。この判断を巡っては国税審判所採決や最高裁判例がいくつかあります。
    そもそも雇用契約なのか業務委託契約なのかという点が判断の基準なのですが、契約の紙面上ではなく、実態がどうなのかがポイントとなります。
    詳しくは、次回説明いたします。


    次回へ続く

税理士

藤井 崇

ストリームライン会計事務所