中小企業経営のK社長:男性。50代。建築関係の仕事を行っており雇用関係の従業員だけでは人手不足のため、臨時で人を雇うこともある。

  • 藤井
  • 前回に引き続いてご説明いたします。
    給与か外注費かの具体的な判断の基準について最高裁判例を基にした消費税法の通達で4つの基準が示されています。形式だけでなく基本的にはこの4つの要件で総合判断を行います。

    事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
    ①その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
    ②役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
    ③まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
    ④役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。 

    国税庁 消費税基本通達1-1-1
  • 藤井
  • 副業スタッフが外注費としたい場合なので、請負契約書を締結した前提に説明いたします。外注費であるためには
    ①は、副業スタッフの作業が他の従業員に代わることができない作業であること
    ②は、作業納期さえ守れば、副業スタッフが作業時間や休憩時間を自由に決め、会社の指揮・監督下にいないこと。
    ③は、副業スタッフは、作業が完了してない場合は、報酬がもらえない上事故が起こった場合の責任を自分で負うことになっていること。
    ④は、副業スタッフが作業をする際は自分で用意した材料と用具を使っていること。

    と解釈できます。通達では、総合判断と記載されていますので、すべての要件を満
    たさないと外注費にならないというわけではないですが、逆に言えば全てを満たせば、外注費といえます。
  • K社長
  • この判断の基準だと、副業スタッフの支払いを外注費にするのは中々難しそうですね。
    会社側としても給与ではなく、外注費とした場合のメリットがありそうなので変更してもいいかなと思っていたのですけどね・・・
  • 藤井
  • そうですね。まず、社会保険の加入義務という点で大きく違いますね。
    会社と雇用契約があり給与を支払っている一定の要件を満たす従業員については、社会保険に加入しなければなりません。健康保険料と厚生年金については、会社と従業員で折半負担となりますし、雇用保険については、約6割を会社側が負担しますからね。請負契約の外注費とすることで社会保険料の会社負担が減らせますね。
  • K社長
  • うちの会社は、消費税を納めている課税事業者なので消費税についてもメリットがあると思うのですが
  • 藤井
  • 消費税についても給与であれば、非課税仕入に該当し売上などから預かった消費税から控除できませんが、外注費であれば、課税仕入れに該当するため控除が可能となり節税効果はあります。ただ、簡易課税制度(売上から控除する消費税を計算する制度)を利用する場合はそのメリットはないですね。
  • K社長
  • なるほど。
    外注費にしてほしいと副業スタッフが訴えるくらいなので、副業スタッフ側でも給与でなく外注費にするメリットがあると思うのですが。
  • 藤井
  • そうですね。外注費としてもらうということは、副業スタッフは個人事業主として事業所得を得ることになります。申請届出等の手間はかかりますが、本業の会社の給与所得で、給与所得控除を受けつつ、副業の事業所得の方で、事業の経費と青色申告特別控除額65万円を利用することが可能です。もし事業所得が赤字になった場合は、その赤字と給与所得と合算して全体の所得金額を減らすことが可能なので、こちらも節税効果はありますね。会社と個人にメリットがあって、税務署や労基署にデメリットが大きいので目を付けられることもありますので注意が必要です。
  • K社長
  • 詳しい説明ありがとうございました。

税理士

藤井 崇

ストリームライン会計事務所